その日は、夏休み最後の日でした。

 

練習試合が組まれていて対戦相手が着替える時間に

私たちは、準備運動をしていました。

 

ボールを触らない状態で1対1になり

オフェンスが抜こうとするのを

ディフェンスが止める

 

という練習をA君と組んでやっていました。

 

私はディフェンスをしていて

右から抜かれたので、追いかけようと私も右へ振り返りました。

 

そして、魔の悪いことに

A君の蹴り足と、私の振り返った軸足が重なってしまい

足払いをされた形になって

受け身も取らずに、フロアへ後頭部から落ちてしまいます。

　

小園中学は1976年創立でまだ10年しか経っていない新しい学校で

 

体育館の床は板張りではなく

特殊な滑り止めが効いた発砲ゴムのような床でした。

 

バスケットシューズの底面が削れて無くなっていても

ちゃんとストップできるほど、良く止まるゴムでした。

きっと、コンクリートの上にそのゴムが敷かれていたのでしょう。

　

体育館中に響くほどに「ゴツン！！」という音がして

私は倒れていました。

 

A君が心配して声をかけると

数秒後に私はスクッとたちあがり

扉の開いていた用具庫へスタスタを入っていきました。

 

その中で、後頭部をかかえ

「いっった～～～～～～！！」

と、絶叫します。

 

そして、その用具庫には

分厚いエアマットが置いてあったので

そこで、寝転んで休憩を取らせてもらいました。

 

そのマットで休んでいる時に

別のチームメイトM君を呼んで、質問をするのです。

 

今：「なぁなぁ、M。ちょぴり、俺、どうなったん？」

M：「Aと、1対1して、頭ぶつけたやん」

今：「そっか、ありがとう」

 

そして、またすぐに

今：「なぁなぁ、M。ちょっぴり、俺、誰とやってたっけ？」

M：「え？　Aやんか」

今：「そっか、ありがとう」

 

Mが戻ろうとすると呼び止めます

今：「なぁなぁ、M。ちょっぴり、おれ、何してた？」

M：「Aと、1対1してたで」

今：「そっか、ありがとう」

 

そして、戻ろうとするMをまた呼び止め

今：「なぁなぁ、M。ちょっぴり、今日何月何日？」

M：「8月31日やで」

今：「そっか、ありがとう」

 

と、その後、何度もM君を呼び止め

無限ループのごとく、「ちょっぴり」を付けて

同じような質問を何度かしていたようです。

 

優しいMは、頭をぶつけた私に気遣って

丁寧に答えてくれていたようです。

​​​​​​そして、
​​​​​​「なぁなぁ、Ｍ。ちょっぴり、明日から夏休み？」

 

と、発言をしたところで

Ｍが、慌てて「今井の頭がおかしくなった～！！」

と、別部屋にいた顧問を呼びに行ってくれ

たまたま、学校のすぐ近くにあった脳神経外科へ受診して

脳震盪と診断されました。

 

 

頭を床にぶつけてからの話は

未だに思い出せないので、

チームメイトからの後日談です。

 

このあと、バスケ部を引退するまで

チームメイトからは「ちょっぴり」と呼ばれ続けました（笑）

 

私が意識ハッキリと目を覚ましたのは9/1の夕方

途中、ご飯を食べたりはしていたようですが、

母にも同じことを何度か質問していたようです

もちろん、その記憶も残っていません（笑）

 

 

私は、8/31のつもりで目が覚めていて

氷枕が置いてあったのがとても不思議で

母に状況を訊いた後でも

理解するのにかなり時間がかかったことを覚えています。

 

ちなみに、なぜ、コンクリートの上にゴムが敷いていた

と考えるのかというと

卒業してから数年後に、小園中へ訪問すると、

板張りの体育館に変わっていました。

 

10年やそこらで体育館の床が張り替えられた

ということは、よっぽどの事が起きたのでしょう。

それが、私の出来事と関係あるようにしか思えません。